古代の染め色

政の際に殿上人だけが着用できた植物染色による式服。

その式服を染め出した植物染めの技術は、
天平時代に技術が完成しました。
法隆寺献納宝物(現在、東京国立博物館蔵)や
正倉院宝物のなかに遺品も多く見られ、当時の色を残しています。
ことに、天平時代の遺品は遺品の中でも最も美しい色を
現在も尚たたえています。
(残念な事に、近年では殆ど展示公開されなくなってきています)

この頃にでき上がった技術が
有名な平安時代の襲の色目を染めたのでした。

その染め色は、一度見たら忘れられません。
日本アカネで染めた深紅。「あけ」といわれる色ですが、
燃えているようなのです。近寄ったら熱そうな、、、
苅安で染めた深い黄色。その色は、輝きそのもの。
近くで見ると現代のいわゆる草木染めと
同じようですが
遠めに見ればはっきりとその違いが分かります。
自ら光を放っている物だけが持つ、
強さと美しさを持っています。

その理由は、先ず白が染められていたこと。
絹を完全に裸にし(素にし)、そこに白を染めます。
それは、紫外線領域の蛍光を持つ
動物の有る部分を利用したということです。
(が、私はやったことはありません。
 民族によってはいまだにそれを
 別のものを白くするために日常で行っている所があります。)
ちなみに蛍光増白剤も、同じ原理ですが効能は弱いのです。
動物のそれは、1000年以上白を保っています。

その白の上に、色を乗せました。
その色は、酸にもアルカリにも強いので
色を抜くことが出来ません。
光でも色の変化は起こらないのです。

この方法を秘伝というかたちで受け継ぎ
その技を科学的に検証しつつ
現代に残された遺品を調査、復元されたのが
前田雨城先生です。
法隆寺献納宝物と、雨城先生の復元作品に
偶然であったのが私の染めの道の始まりでした。

何とか古法の染めをたどれるようになった今、
私は
いにしえの染め技法はまるで
未来の染めのように新しい、と感じています。

そして様々な関わりの有ることどもを
学んでいくに従って
この星の歴史や、物質界のことわり
そのすべてを古代の人はすでに感じ取り
言葉にする前に美しいものを作りあげてきたことを思うと
涙が出るような
そんな気持ちになるのです。
さらに、この列島にそれなりの平和があり
1000年も
(いやもっと長く、それは多分縄文時代から遡るべきなのでしょう)
技や美しいものが残されてきたことを
感謝せずにはいられません。